「たとえば、こういう人がお客様にいるけれども、どうですか」というと、「では、その人を呼んで」という話になる。
一緒に行って、お客様同士で知り合いになってもらうというやり方をよくする(外資系銀行/証券のPB)これらのコメントを踏まえると、ビジネスからプライベートまで、マッチング・サービスの範囲は広いが、共通するのは、レポートのような仕様の定まったサービスではなく、「人と人をつなぐ」ことに価値を付けている点である。
その背景にあるのは、富裕層・超富裕層は、「加工された情報」よりも「生の情報」を好むということである。
このポイントをおさえておけば、マッチング・サービスを、競合他社(行)に対する目に見えない差別化要素にすることができる。
ただし、官僚的な組織では、マッチング・サービスをスムーズに提供することができない。
質の高いマッチング・サービスを提供するためには、プライベートバンカー同士が、雑談風に自然な情報交換を行い、他部門とも連携できるような、オープンな風土と環境が必要である。
セカンドオピニオンはいつでも聞きたい富裕層・超富裕層の顧客を増やすための三つ目のポイントは、セカンドオピニオンの提供である。
セカンドオピニオンとは、医療の現場において患者が最善の治療を受けるために、診断や治療方針について主治医以外の医師から聞く意見(第二の意見)である。
超富裕層には、通常、顧問税理士やメインバンクなどの相談相手(主治医)が必ず存在する。
ゆえに、「主治医」の存在を意識して、金融機関は、自社(行)との取引がない超富裕層へのアプローチに尻込みしがちである。
しかし、ほとんどの超富裕層は、心の底では、これまで付き合ってきた「主治医」と違う視点のアドバイスを求めている。
なぜなら、彼らは自分が常に「最高のサービス」を受けていないと気が済まないからである。
たとえば、付き合いの長い顧問税理士が「本当に最先端の動向を踏まえたアドバイスをしてくれているか」、メインバンクが「他の金融機関に負けない情報を持ってきているか」といった観点では、常に不安を感じている。
もちろん、自分の事業やファミリーのことを深く理解しているメイン金融機関を、すぐに変更するつもりはないが、他社(行)の意見を聞くことには意外と積極的である。
したがって、取引のない富裕層・超富裕層にアプローチする際に、すでにメイン金融機関や信頼できる相談相手がいたとしても、「セカンドオピニオンとして当社(行)の話を聞いてみませんか」と問いかければ、確実に最初の扉は開く(むろん、そこから先は、本当の実力が問われる)。
とくに、意思決定において慎重で、あらゆる情報を求める子ども世代に対しては、セカンドオピニオンの提供はきわめて有効となるだろう。
セカンドオピニオンを求める超富裕層の奥底にある本質は何か。
ある外資系銀行/証券のプライベートバンカーは、次のように語っている。
プライベートバンキングのなかで、運用の話というのは最後の最後にちょっと出てくるだけ。
ところが、証券会社から外資系PBに移ってきたプライベートバンカーは、商品を売ればいいと思っている人が多い。
本当は、商品を買っていただけるまでの「汗のかき方」が大事だし、そこが楽しいところ。
着眼点としては、お客様のバランスのとれていないところを埋めにいくことが大事だと思っている。
資産についても、事業についても、それ以外についてもあてはまる(外資系銀行/証券のPB)セカンドオピニオンの本質は、メイン金融機関が、顧客との長い関係で見えなくなってしまった「バランスの崩れ」を第三者の立場で指摘することにある。
そのためには、顧客との限られた会話のなかで、どこにバランスを欠いているかを、素早く見つけて指摘しなければならない。
富裕層・超富裕層ビジネスの質を向上するには複数担当制・チーム制でがっちりサポートする富裕層・超富裕層に対するサービスの質を上げるために、これまで多くの金融機関が複数担当制やチーム制を試みてきた。
ところが、連携がスムーズでないと富裕層・超富裕層の顧客から不満が出るために、複数担当制・チーム制はあまり定着していない。
複数担当制・チーム制を考えるために、金融機関と顧客との関係によって、いくつかのステージに分けてみよう。
最初は、自社(行)との取引がない富裕層・超富裕層にアプローチする場合である。
この場合には、専門家によるチーム編成が有効である。
なぜなら、プライベートバンカー個人の力量が顧客に伝わるまでには、ある程度の時間がかかることもある。
短時間のうちに、より強烈に専門性をアピールするためには、チーム編成という戦術を効果的に活用すべきである。
二番目に、富裕層・超富裕層の子ども世代へのアプローチの場合である。
このときも、チーム制が効果をあげることが多い。
たとえば、他社(行)の顧客に積極的にアプローチする外資系銀行/証券のなかには、子ども世代にチーム制を積極的にアピールして成功しているところもある。
これは、富裕層・超富裕層の子ども世代が、親世代よりもリスクに敏感で、意思決定に慎重な点をうまく利用して、サポート体制の充実をアピールしていると見ることができる。
三番目に、取引の長い顧客に対する複数担当制・チーム制についてである。
これが1番難関である。
取引の長い顧客に、中途半端に、二〜三名の担当者を置くと、連携が不十分になり、顧客が不満を感じてしまう。
よって、取引の長い顧客には、主担当者を明確にするとともに、複数の担当者が、「あたかも1人の担当者のように」連携できなければならない。
つまり、富裕層・超富裕層とプライベートバンカーの「点と点の関係」ではなく、富裕層・超富裕層ファミリーと担当チームの「面と面の関係」を築くということである。
たとえば、超富裕層向けのファミリーオフィス・サービスは、超富裕層ファミリーと「面と面の関係」を築くための1つの戦術である。
ファミリーオフィスとは、超富裕層ファミリーの資産を一括で管理し、1つの理念の下で、事業や資産の継承、税金対策、リソースの有効配分を行う組織体のことである。
ファミリーオフィス・サービスを展開する米国の金融機関のPBサービスの例を紹介しよう。
米国Hのファミリーオフィス・サービスHバンクは、カナダのトロントに本社を置くBフィナンシャルグループのH・フィナンシャル・コーポレーション傘下にある金融機関である。
Hバンクは、最低で100万米ドル以上の初期投資額を持つ個人の財産管理ニーズに応える専門的なサービスを提供している。
その範囲は、ファイナンシャルプランニング、PBサービス、資産運用、遺産相続計画、遺言信託に及んでいる。
Hは、Hバンクの子会社であり、2500万米ドル以上の純資産を持つウルトラ・ハイネットワース(個人だけでなく家族を含む)に対する包括的なファミリーオフィス・サービスの提供を行っている。
Hの典型的な顧客は、事業の売却や合併、またはIPO(新規株式公開)によって多額の金額を受け取った起業家である。
このような顧客を、Bのキャピタルマーケット部門から紹介される。
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